R61BOYS「中央分離帯」CD
今はもうなくなってしまったが、シカゴとサンタモニカを結ぶルート66 は「アメリカのメイン・ストリート」と呼ばれ、どこへでも行ける自由の象徴、成功の象徴としてポップ・カルチャーにも愛されたアメリカ初の国道の一つである。それに対して、R61 こと伊勢原街道は、神奈川県の平塚と伊勢原を平坦な直線で結ぶ全長10 キロほどのなんのことはない県道だ。その道は象徴的な意味でどこへ向かっていくのだろうか。 さきごろ、SoundCloud でBushmind のトラックに乗せ、スケーターやブッキッシュな音楽好きが集う綱島の古書店、Feever Bug について歌った「FEEVER BUG」のフリーダウンロードが話題となったヒップホップ・グループ、R61 Boys。彼らのファースト・アルバムは、一聴すれば、その道がどこにも通じていないことはよく分かる。トラックに象徴されるこの作品の徹底したヌケの悪さは、世界各地のリアルとヴァーチャルの狭間でブルーとグリーンのエージェントが激しい暗闘を繰り広げているような2014 年において、かなり突出している。 しかし、都会の高揚感や空虚さとも地方のレイドバック感や沈降感とも違う郊外の生ぬるさ、時間をかけて、全てがゆっくり溶けていく様を乾いたユーモアと内々にしか分からないスラングを交えて描き出す彼らについて、その実体は謎に包まれている。メンバーはトラック・メイカーのBacon 以下、virgnia smell、ヤマーキーボーン、ケロピ、まーくん、DJ 283 からなる6 名。江ノ島OPPA-LA にて毎月第三金曜に行われているHiratuka Decorder 主宰のパーティ『DOGBITE』をホームに活動をしているとか、別動グループであるHoodies がCD-R で一枚のEP をリリースしているとか、はたまた、メンバーは伊勢原に住んでいないらしいとか、断片的な情報から浮かび上がるグループのイメージは曖昧なままだ。 しかし、何がホントで何がウソなのか、非常に混沌とした社会状況に呼応するかのように、この作品の気味が悪いくらいに心地良いヌケの悪さや曖昧さは非常にしっくり来る。どこにも向かわない、ただ、そこにある異形のヒップホップ。その静かな衝撃はじわじわとあなたを浸食するはずだ。 ■R61BOYS 謎が多いとされるR61Boys は活動が不定期な上、経緯不明が過ぎて口コミと妄想で勝手に情報構築されたRap グループになってしまったように思える。全くもって解読不可能な彼らの音楽は、何故か中毒性が高く、彼らを見た者、聞いた者を虜にしていく。犠牲者は緩やかに増加傾向にあるようです。IseharaKaidoBoys 期から数々の作品を出しているが、全て配布のみ。正式に彼らのラップが聞けるのは遊び仲間のHiratukaDecoder「俺達はRap をしたいんだ、言いたい事が無いようで有るから」、Dogbite のSoundcloud で聞ける「Dogbiter」、Bushmind プロデュースによる「FeeverBug」のみとなっている。そんな彼らがようやくフワついた腰を抑えつけ、2014 年12 月に古くから付き合いのあるDJ49 主宰のUNDER THRONE PRODUCTION から初の公式物理音源「中央分離帯」をようやくリリース予定。 01: 61mojo 02: CustomerCenter 03: ton de bring 04: skit 〜夜〜 05: LastDelay 06: Poison City pt3 07: yataro FM 08: skit2 〜 Wall.E 〜 09: fit 10: heisei sleep